日の出・日の入りと明け六つ・暮れ六つについて

和時計アプリでは文字盤に昼夜の境界を表示することが出来ます。

この昼夜の境界を分けているのが明け六つと暮れ六つ、卯の正刻と酉の正刻になります。

卯の正刻と酉の正刻は時代によって、あるいは地域によって、さらには時鐘を鳴らしていたお寺によって扱いが違うようなことがありました。

もちろん日の出と日の入りは天文現象ですから見間違うことはないのですが、明け六つについては日の出前に空が明るくなってきて手のひらの筋が三本見える頃といったアナログな定義で運用されたりしていました。暮れ六つは逆に日が落ちてきてから暗くなって見えなくなるまでとかですね。

幕府の天文方などでは、一日百刻の定時法を使用していたので、彼らは日の出の二刻半前(約36分)と日の入りの二刻半後などとしていたそうですが、この一日百刻制は世間的に受け入れられていた訳ではありませんでしたし、薄明の時間は季節によって変わるので、これも正確とは言えませんでした。

しかしこれでは統一した時制としては機能しませんから、寛政歴の時代になって幕府の天文方が観測して、春分・秋分の時に京都の改暦所における日の出前の二刻半、日の入後の二刻半に太陽の俯角がいくつなのかを定めました。それが、寛政暦書に七度三十六分(一度=百分基準)と書かれていたので、そのまま換算すると七度二十一分三十六秒になるそうです(国立天文台 暦Wiki参照)。

ところで筆者が和時計アプリの計算式に組み込んだのはこれとは少し異なる、七度二十一分四十秒です。こちらは橋本万平先生の『日本の時刻制度 増補版』P27に記載があり、内田正男先生の『暦と日本人』P210にも記載がある数字です。暦Wikiでは正確に計算すると七度二十一分四十一秒だと書いてありますが、大正6年刊の大谷亮吉編著『伊能忠敬』p.568に記載のある京都改暦所の緯度を採用すると七度二十一分四十秒になるが、根拠が怪しいとも書かれています。

ここまで細かい話を書いてきましたが、ではその一秒でどれくらい誤差があるものなかというと、実は約0.05秒〜0.07秒にしかなりません。和時計の構造は分単位での表示で秒針もありませんから、まったく問題ないということになりますね。十進数で、7.36なのか7.361なのか、はたまた7.3615なのか、天文家ってこういうところにこだわるんですね。

追記:
寛政暦書が採用した 7.36 が、60進法だと 7°21’36” になるのを見ていて、ひょっとして幕府天文方は下二桁が36で揃うのを美しいと思って採用したのかもと想像しました。

寛政暦を作った高橋至時や間重富が「暦書に載せる公式な定義としては、十進法の 7.36 と秒の 36 が合致するこの数値こそが、天の理に適っている」と考えたのだとしたら、わくわくしますね。

さらに追記:
暦Wikiを見直してみると、冒頭にこんな記載がありました。どうやら橋本先生や内田先生の推す7.361はここに典拠を求めたほうがよさそうです。東京天文台基準で俯角7°21′40″=7.361度です。当アプリが採用しているのは、こちらの数字ということになります。

“太陽暦改暦後はしばらく掲載されていませんでしたが、明治45年(大正元年、1912)暦から掲載されるようになりました。東京天文台の地平線に対し日の中心の俯角7°21′40″なるときの時刻 明治五年以前明六つ暮六つと称したる時刻に相当す”


 

暦Wiki/薄明/夜明と日暮 – 国立天文台暦計算室
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