
和時計は西洋の時計が日本で進化し、ガラパゴス化したものです。江戸時代に使われたものですから、英語で紹介する時は “Wadokei is Edo clock” と言っていますが、実際には江戸以外の日本国内各所で使われていました。
現代の基準だとTimeZoneの Asia/Tokyo は東京基準ですが、基準点はどこかというと旧・東京天文台(東京都港区麻布台)になっています。現在の「麻布台ヒルズ」の敷地内、かつて日本郵政グループビルがあった場所のすぐ近く(ロシア大使館の隣)にあたります。
ANA の tz database の asia という定義ファイルを見ると、Asia/Tokyo の地方平均時、LMT、の根拠として、旧・東京天文台の位置がコメントされています。そこには次の経緯度が記されています。
北緯: 35° 39′ 16.0″ 東経: 139° 44′ 40.90″
この経度を時刻に直すと、約 9時間18分58.7秒 になります。これが、tz database に記録されている Asia/Tokyo の古い地方平均時 UTC+09:18:59 の由来です。
ただし、この経緯度は現在の Google Maps や GPS で使われる世界測地系の座標としてそのまま読むべきものではなく、旧い日本測地系に基づく値と考えられます。現在、国土地理院が示している日本経緯度原点の世界測地系での値は、おおよそ次の通りです。
北緯: 35° 39′ 45″ 東経: 139° 44′ 31″
では、明治45年暦にある「東京天文台の地平線に対し日の中心の俯角 7°21′40″ なるときの時刻、明治五年以前明六つ暮六つと称したる時刻に相当す」という記述も、この麻布台の東京天文台を基準としているのでしょうか。
当アプリでは、和時計を「江戸の時刻」として扱うため、江戸城本丸跡を基準点としています。そこで、麻布台の旧・東京天文台と江戸城本丸跡を比較してみます。
旧・東京天文台(麻布): 北緯約 35° 39′ 45″
江戸城本丸跡(皇居) : 北緯約 35° 41′ 18”
江戸城の方が、麻布よりもほんの少しだけ北に位置しています。そのため春分の日の薄明の長さ(日の出から明け六つまでの時間)を計算すると、麻布は約 36分17.4秒、江戸城で約 36分18.3秒になります。その差はわずか約0.9秒でしかありません。
実際の暦計算や観測は、東京天文台を基準として行われていたと考えるのが自然です。しかし、和時計を「江戸の時計」として楽しむのであれば、基準点を江戸城に置くのも自然です。しかも、上の通り両者の差は1秒にも満たないため、実用上はほとんど問題になりません。
そこで当アプリでは、江戸城本丸跡を基準として時刻を計算する設定を「江戸モード」としました。
江戸モードは既定値ではオンになっているので、世界中どこにいても江戸の時刻を知ることが出来るのです。これは便利ですね。
一方、実用上は現在地の日の出・日の入りや時刻を見たい場合も多いでしょう。その場合は、江戸モードをオフにすると、現在地を基準にして計算・表示します。

また、寛政暦補正については、日本国内で使う分には概ね自然に機能します。しかし、ヨーロッパなどの高緯度地域では、薄明や昼夜の条件が日本とは大きく異なります。白夜に近い状態になる地域もあります。そのため、高緯度地域で使う場合は、寛政暦補正をオフにした方が自然な表示になることがあります。場合によっては、白夜でもないのに夜がなくなってしまうことがあります。
それでは、v2.0で追加された江戸モードをお楽しみください。



